生野区
空き家リノベーション
アイデアコンクール
Akiya renovation idea contest
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生野“らしさ”を探るトークライブ
服部滋樹×木村貴一×塩山 諒
2015.7.30 @秘密基地Socket
アイデアコンクールに先駆け、服部滋樹氏(graf代表)、木村貴一氏(まちのえんがわ)、塩山 諒氏(NPO法人スマイルスタイル代表)によるトークライブを開催しました。
生野区でできる暮らし ― 塩山さんの視点から広がる~生野の魅力~
塩山:ヨーロッパには若者支援住宅があるが、日本にはなかなかないです。困窮状態の若者が
収入の少ない中でも生活を送っていくためには、固定費をいくら下げるかが課題です。
日本の若者の貧困問題を改善し、幸せな暮らしの状況を作るための制度づくりや中間支
援、まちづくりといった視点に注目しています。
服部:それは都市型のアイデアか、田舎暮らしとしてのフォーマットなのでしょうか。日本全
国の問題として取り組むのにあたって、大阪は難しくないですか?
塩山:都市型として考えています。田舎暮らしでは既に実現されている部分があるかもしれま
せんが、大阪ではまだないです。
服部:生野区はすごく参考になるような気がします。
木村:田舎には農業を中心とした暮らせる環境がある。生野区には農業の代わりにものづくり
があります。ものづくりをしながら職住一体で暮らすことが可能な場所だと思います。
田舎暮らしの良い部分を取り入れていけたら良いのではないでしょうか。生野区にはそ
んな雰囲気があります。
服部:半農半Xと呼ばれるものと同じですね。職住一体は大切なキーワード。生きることと暮
らすことがシンプルに一体となっている言葉だと思います。同じ価値観を共有できる土
壌が生野区にはあると思いますね。
塩山:ノンキャリアの若者の仕事はルーティンワークが多い。仕事現場で生きる喜びや変化・
成長を味わうことができにくい現状があります。衣食住の中に、変化・成長を体感でき
るようなコンテンツやコミュニティプログラムがあると良いのではないかと思います。
服部:木村さんは“まちのえんがわ”というプロジェクトを進めておられますが、きっかけは何
だったのでしょうか?
木村:一般的に住宅には、外と内をつなぐあいまいな領域としての縁側があります。自然や人
とのコミュニケーションが図れる中間領域。都市的になればなるほど、コミュニケー
ションの領域としての縁側の機能は少なくなってきています。縁側の機能を都市の中で
会社が持って、コミュニケーションを誘発できればと考え始めました。住宅がまちに開
くことが難しい時代なので、会社という存在がまちに開き、コミュニケーションの場を
設けたらどうなるかというチャレンジです。
服部:プロジェクトは、うまくいっていればプログラムになり継続するものだと思っていま
す。木村さんのまちのえんがわが、まわりを触発し、今回の生野区のプロジェクトにも
つながっているのではないかと考えると、すごい事例ではないかと感じています。
生野区での暮らしはかっこいい!?― 服部さんの視点から~どのように伝えるか~
服部:外部の情報を吸収できる人材が生野区の中にもっといれば良いのではないかと思ってい
ます。外部との接点を持っていると、自分たちの問題点ややるべきことが見えてきま
す。外部からの情報がもっと入りやすい状況を中でつくるか、もしくは外部に体を運ぶ
か。生野区にとっては特に大事なことではないかと思います。動きをつくる意味でも、
若者に生野区に関心をもってもらうことは良いことなのでは。外部がアクセスしやすい
状態は、まちに“チャンネル”があること。「生野といえば」というメジャーチャンネル
が必要だと思います。例えばコリアンタウンであったり、ものづくりであったり。その
中にさらに、どんなものづくりがあるかわかるローカルチャンネルがあるとよりいいで
すね。いずれにせよ職住一体は大切なキーワードなので、どのように表に出していくか
が重要だと思います。
木村:縁側は、外の人にとってはまちの入口になり、中の人にとっては出口になるような機能
をもつことがふさわしいと言われたことがあります。生野区にとっての縁側でありたい
ですね。
服部:情報には早いスピードで届くものと、ゆっくりのスピードでじわじわそれ以上に届くも
のとがあります。一方向(体験)だけではない、時間がたってからでも見返せるパッ
ケージが必要だと思います。
塩山:メディアも乱立してきている状況があります。情報もあふれている中で、メディアが埋
もれてしまうことが心配です。選ばれるメディアにすることも必要。生野区のコンテン
ツとして、「ものづくり」「暮らし」「文化」などの切り口の中で優先順位を高くする
ものを考えることも大切だと思います。生き残りをかけた生野区のブランディング、ま
ちづくりの方向性が求められているのだと思います。そこがクリアになると世界中から
人が集まるまちになるのではないでしょうか。
服部:先ほど言ったメジャーチャンネルのひとつがものづくりやコリアンタウンであることは
確かなのだけれども、その中身は何?と聞かれた時の中身がまだはっきりしていないと
いうことがあるのかもしれませんね。
木村:生野区のものづくりの実態がまだ知られていないということだと思います。部品や、総
じて小さなものづくりを行っています。その工場がかっこいい。長屋の工場の雰囲気全
体が、ひとつのモノを生み出す装置・道具になっています。
服部:そのかっこ良さはすごくわかります。
木村:ものづくりというと大枠でとらえがちですが、いいモノ(製品)をつくるためのシステ
ムのひとつとして生野区のものづくりが大事であることをもっと広く知ってもらいたい
です。
服部:塩山さんがおっしゃった何を際立たせるかということを考えた場合、分業の小さな町工
場がたくさんある状態で何を触媒(きっかけ)にすれば、反応がおこるのかまだ見えて
いない状況ですね。テクノロジーなのかバイオなのか、何か別のフィールドと組み合わ
せることもひとつかもしれませんね。
塩山:まちのリズム、リズムに合わせた生活に注目すると面白いのではないでしょうか。一個
一個のコンテンツでみると埋もれてしまうかもしれないですが、生野区の風土・文化と
いった良さを「生活」として打ち出せると良いのではないでしょうか。
服部:職人のおじちゃんが、夕方5時になったら隣のおじちゃんと縁側で将棋さしてお酒を飲
んでいるイメージ(笑)。そんな空気感があります。
塩山:空気感が伝わると、それをあこがれたり、生きるビジョンにする若者が出てくると思い
ます。
服部:細部まで見せないと奥行きが伝わらない。時間をかけて取り組む必要があるのではない
でしょうか。
木村:モノをつくりながら暮らしていけるまちだということがキーワードになりそうですね。
モノをつくるまちは暮らしにくいまちであるといったイメージがありますが、銭湯も
あってお好み焼屋もあって、割と暮らしやすい要素があります。いろんな要素を見直す
必要があると思います。
服部:メディアを考えた場合、単なるものづくり新聞みたいなものではなくて、〇〇スーパー
のキャベツの値段や家賃も載っているような、まちの周辺のいろんな要素が一体になっ
たメディアが生まれたらいいかもしれないですね。
塩山:発信して外につなぐことと同時に、ものづくりの人たちをどう権威づけるかを考えてい
くことも大事かもしれません。まちの先生として若者たちの学びの対象になり、好奇心
や主体性を呼び込めるような枠組み、アーカイブ化があるといいと思います。
木村:シリコンバレーのようになったらいいですね。言い過ぎかなぁ。(笑)
生野のリズム・空気感はいかに? ~3人のまとめ~
塩山:ものづくりや銭湯、文化など暮らしを支えるいろんなコンテンツがあり、それらが生野
で生活していくリズムになっているところでしょうか。このリズムにあこがれる若者の
生活の場として空家が活用されるといいですね。そのためには求心力のあるスローガン
が必要かな。
木村:小さなものづくりのパワースポット、そんな、いい空気感のあるまちが生野だと思って
います。それを知ってもらって、それをよしとする人たちが集まってきて、ものを創れ
そうだなとか、新しいアイデアが湧いてくる、そんな空気をもっていて、そしてパワー
もあって、ちょっと話を聞きにいこうと思えるような人がいて、教えてもらったり、行
き詰まった時にもがんばる気になれたり、そこに暮らしもあって、生野区がそんな場所
であれたらいいなと思っています。
服部:生野には銭湯が残っています。そもそも日本における暮らし方は外に開いたものであっ
たと思います。長屋で十分住まいが成立していました。銭湯が残っている生野は、まさ
に外に開いた暮らしのあるまち。生野の道は廊下と考え、半分家の中を歩いてるような
もの、それが生野かもしれません。特にコミュニケーションを取りながら生きていきた
いな、何か創りながら生きていきたいなと思う人が、人の温度を感じたり、コミュニ
ケーションが図れたり、人情味があふれだしている、そんなまちではないかと感じてい
ます。空き家の活用を考える時にも、空き家のことだけを考えるのではなくて、空き家
と銭湯までの距離、買い物に行くまでの距離、そこにどんな関係があるのか、周辺のこ
とをみて空き家を考えてもらえるといいのではないでしょうか。半分開いて、半分閉じ
ている、暮らしもチラリズム、それが生野ではないかという気がしています。